糖尿病網膜症
糖尿病網膜症とは
網膜症、腎症、神経症を合わせて糖尿病の三大合併症と言います。
これらは血糖値が高い状態が長期間続き、細い血管が障害されると発症します。その中でも糖尿病網膜症は網膜が傷む病気で、進行すると視力障害につながります。
内科と連携した治療
糖尿病の治療は内科が中心となります、当院に隣接して診療されている「林医院」と、同時に診ている糖尿病患者さんについては情報交換会(1回/月)を開きます。
内科とディスカッションする事は、当院の網膜症治療のアップデートに大変役立っています。
初期:単純糖尿病網膜症
自覚症状はほとんどありません。
目の中では細い血管で小さな出血があったり、血管の壁が盛り上がる血管瘤ができたりしています。血漿が漏れて網膜に硬性白斑(白いシミのようなもの)ができることもあります。
中期:前増殖糖尿病網膜症
かすみなどを感じることもありますが、自覚症状が無いこともあります。
目の中では網膜の血管が詰まって十分に血流が行き渡らなくなり、不足した血液を急いで届けるための「新生血管」という細い血管を作る準備が始まります。
末期:増殖糖尿病網膜症
目の中の状態によって自覚症状は異なりますが、視界の中に影が見える飛蚊症や、急激な視力低下などがあります。
目の中では不足した血流を届けるために新生血管ができます。
この新生血管は正常な血管では無いため脆く、簡単に出血してしまいます。
硝子体という眼球を満たしているゼリー状の組織で出血すれば飛蚊症、出血量が多ければ視力低下を引き起こします。
さらに進行すると増殖膜ができて、網膜を引っ張ることで網膜剥離を起こします。
網膜剥離になるとやがて失明します。
糖尿病網膜症の治療
糖尿病網膜症の治療の大前提は血糖値のコントロールです。 糖尿病が今以上に悪化しないように着実にコントロールすることが大切です。 眼科的には、経過観察と新生血管や硝子体手術、網膜剥離などへの対処を行います。
新生血管への治療(中期:前増殖性糖尿病網膜症になったら直ちに行うことが理想)
レーザー治療(汎網膜光凝固術)を行って、脆く出血し易い新生血管が 作られることを防ぎます。 このレーザー治療はあくまでも症状の進行を止めるためのもので、見え方の回復を目的としていません。(むしろ、全体的に暗くなります。) しかし、末期へ進行するのを防ぐための切り札として最も一般的な治療法です。
硝子体出血や網膜剥離の治療
硝子体に出血が起こった場合や網膜剥離がある場合には硝子体手術を行います。 当院では手術は行っていませんので 適切な医療機関へ紹介します。 硝子体手術は非常に難しい手術であり、手術をしたからといって視力が戻る保証はありませんので、この状態にならないようにすることが重要です。
当院の特徴
当院が力を入れる理由
Aさん 設計事務所の社長 57歳
網膜症の病期は増殖期(最終ステージ)であり、膜剥離を発症していました。 矯正視力は 左右とも手動弁(目の前で手を振っているのがやっと分かる程度)で、その治療として、硝子体手術による網膜の復位を目指しました。結果的に網膜はよく伸びて、見かけ上は膜剥離が解消した様に見えるのですが、視力は殆ど回復しませんでした。 これを受けて、設計事務所を継いでくれる人を社員の中から募り、Aさんは社長の座を譲って、引退しました。 「カモイの高さだけでも見えればアドバイスのしようがあるのに・・、」と悔しがってらっしゃったのがとても印象的でした。この経験から現役世代(40~50代)の方に視力障害が出るとお仕事が続けられなくなり、ご家族にも大きな影響を与えることを痛感し、今でも糖尿病網膜症の治療に力を入れています。
負担の少ない検査
通常、網膜の状況を調べるためには散瞳検査といって瞳孔を開く点眼を使用して検査します。しかし、点眼で開いた瞳孔はその後(約5時間)開いたままになり、帰りの車が運転できなくなったり、日常生活でも眩しく感じるなど患者さんにとって大きな負担となります。
そのため当院では散瞳せずに広範囲の眼底を検査できる広角眼底カメラを導入しております。この機器を使用することで散瞳せずに糖尿病網膜症の経過を観察できるため患者さんの負担が減り、散瞳はしておりませんので車の運転や仕事に戻れる方が増えています。
広角眼底カメラ
特徴
通常の眼底カメラに比べて圧倒的に広範囲の網膜を少ない撮影回数で調べることができます。
左の画像の緑で囲まれた部分が通常の眼底カメラで撮影した範囲です。 広角眼底カメラの撮影範囲と比べると検査できる範囲の広さが一目瞭然です。 広角眼底カメラの導入前は右の画像のように5~9枚撮影してパノラマ写真を残していましたが、導入後は1,2枚の撮影でより広範囲をより綺麗に観察できるようになりました。